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きのこ帝国×Peronica 2.5次元ポストロック対談

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きのこ帝国×Peronica 2.5次元ポストロック対談

某日、ひょんなことから寺尾伴内(Peronica)は佐藤さん(きのこ帝国)と金川くん(Goodbye Blue Monday/blgtz/よしむらひらく/Peronica etc.)と夜の高円寺へとスゥッ…と吸い寄せられていったのであった。その場にいた私も、なぜだか同席して(させられて?)しまったのだ!赤ちょうちんがイイ感じで煌めく商店街をフラッ…と通り抜けて、露店のいかがわしい飲み屋でしっぽりと一杯クイッ…と。喉がおもわず鳴り、ひょこひょことついていってしまった。情けなや。主に、東京都内で活動するバンドのあれこれを聞かせてもらった(もっとも、伝わりにくいギャグが半分以上を占めていたので割愛させていただいたが…)。

取材・文/半熟たまご
2011年11月掲載

20代前半でつながりあうインディーズ・シーン

――ええと、この3人のつながりは何なんですかね。伴内くんと金川くんは大学時代サークルの同級生だったと聞いています。伴内くんと佐藤さん、佐藤さんと金川くんはどうなの。

伴内:僕と佐藤さんは完全に偶然なんですよね。知り合いの女の子のお兄さんがやっているお店があって、そこでお酒を飲んでたらなんか変な子がいるな…と。声をかけまして。

――それってナンパじゃないんですか(笑)

(一同:うろたえながら、お通しの鶏肉についた塩を舐める)

――ええと…、金川くんと佐藤さんは。

金川:一方的にきのこ帝国のライヴを何回か観たことある感じかな。共通の知人は何人かいるかと思うけど。豚汁くんとかは知ってる?

佐藤:ああ!知ってます。Far Franceの。そんなに喋ったことはないけど。

金川:そうそう。俺はこないだまでKulu Kulu Gardenっていうバンドでも叩いていて。その繋がりで仲良くしたりしたんだけど。

伴内:意外とみんな狭い世界の…。

――なんか他にも色々出てきそうですね。シーンとしては、23歳~24歳くらいの人たちが多いのかな。

金川:1987年~89年生まれくらいの人たちが多いね。大学時代のサークルの後輩にあたる、flight Eggなんかもそうだし。

伴内:意外とみんな狭い世界の…。(註:同じネタを2度使ったことを弁明するべく、タカ&トシのタカさんに憧れているという話を始めだす…)

――きのこ帝国はどういう人と一緒にライヴに出たりしてるんですか。

佐藤:一番大きいイベントだと、リキッド・ルームでkilling boyと一緒に出させてもらったことかなあ。ほかは、ベルボーイ、THE★米騒動とかいろいろ…。八十八ケ所巡礼とか。よしむらひらくさんとも一緒に出たりも。

(店では、ブルース・スプリングスティーン「ボーン・イン・ザ・USA」がシュールに流れている)

宅録ワールド“Peronica”を聴いておもうこと

――佐藤さんはPeronicaを聴いてどう思いましたか。

佐藤:んー、なんか懐かしい感じがした!

伴内:それは、昨年リリースした『トリコロール・サマー』ですね。

――昭和歌謡/ポップスとか渋谷系が混ざった感じの、やわらかい感じでしたね。

佐藤:そうそう。それ聴いていたから、今回のシングル「熟成快感」聴いて“うわっ、バンドだ!”という驚きがあった。でも、メロディ・ラインはいままでと変わってない懐かしい感じで、それが面白いなーって。

伴内:その辺りは言われて気づくんだけど、自分の書くメロディはやっぱクセがあるんですよね。

佐藤:しかも、ヴォーカルは初音ミク…。ぱっと聴いたときに、前歌ってたヴォーカル(imopy)の人の声が思い浮かんだ。

伴内:そうなんだよね! 実は、「ノンレムSwimming」(『トリコロール・サマー』収録)でのimopyのブレスをサンプリングして、「熟成快感」の初音ミクに移植してます。

佐藤:えっ…。ちょっと変態の域!(笑)

(一同ひき笑い、誰とも目線を合わせずに再びお通しの鶏の塩を舐めはじめる)

きのこ帝国とPeronicaの“あやしい関係性”

――かぎりなく人間に近いロボット、という感じがしますね。ところで…。

金川:きのこ帝国のみなさんの音楽的なルーツはどこにあるんですか。

――シューゲイザーなんじゃないかと…。

佐藤:アニソン!ベースの人が、ガチヲタだから…。まあでも、アニソン的な要素は入れさせないんですけど。

金川:やっぱり、きのこ帝国っていう名前はゆらゆら帝国から取ってるんでしょ。

佐藤:もちろんすごい好きだけど、音楽性は違うってよく言われる。

――佐藤さんのギターの音色も、まさにシューゲイザー黄金期のサウンドに近くて、ちょっと感動してしまったんですが、どういう音作りをしているんですか。

佐藤:あまりリバーブとディレイには頼りたくないな…って。“トーンは絞って、トレブルをなるべく上げないように”と意識していたりとかはあります。マイブラとかも好きなんだけど、実際にライヴを生で観ていないだけに参考にするのが難しい。対バンで衝撃をうけた人の音作りを真似したりして、そういう積み重ねですかね。最近リバーブを買ってしまったんですが(笑)。まあでも、エフェクター使わないで、アンプを10個くらい重ねて“グワーッ!”っていう音出してライヴしたいなあ…、と妄想したりもしています。

――い~っすね。クレイジー・ホースみたい。あーちゃんさんの音響に凝ったギターも面白いです。

伴内:…実は僕も、きのこ帝国のギターから影響受けていて。「熟成快感」のギターにつながりました。『トリコロール・サマー』を作った時期は、エモとかシューゲイザーみたいな音楽を全く聴いていなかったんだけど。言ってみれば、そういうジャンルの初体験がきのこ帝国で、衝撃を受けました。

――この時代に生きていて、音楽を聴く中でオルタナ、エモ、シューゲイザーに触れるのが遅いというのは珍しいかもしれませんね。

伴内:昔はフォーク、歌謡曲、ナイアガラー出身だったんですが…。田渕ひさ子さんみたいなギターを大貴くん(「熟成快感」でギターを弾いた)という大学時代の同級生に弾いてもらったんですよ。

――へえ、そうなんですか。

伴内:サビのシューゲイザー全開のギターは、レコスタの後藤さんがアンプを箱で密閉したものを作っていて。その中で音を“グワーン!”反響させまくって超轟音で録音したんだよ。

佐藤:それをいえば、私もPeronicaの影響があるんですよ。もともとオルタナ好きだったけど、ポップも聴くようになったんですよね。ゾンビーズとか。シュガーベイブとか。昔よりビートルズもちゃんと聴くようになったり、“ああ、ギターの音は大きくなくてもいいんだな”って思えるようになりました。それから、歌のメロディを以前より気にするようになりました。

金川:(鶏の塩を舐め続けている)

【コラム】きのこ帝国 ~人間性が浮き彫りになる、ライヴ・バンドとしての魅力~

ひとつのものの見方として、人間性こそがバンドの色として最も出るものだという考え方がある。きのこ帝国のライヴでは、まさにその“人間性”が浮き彫りになることを実感できるし、それがこのバンドのみどころと言えるだろう。
どのバンドであれ、ひとつのライヴに本気で取り組むというのは一緒だが、きのこ帝国はその時に抱いているさまざまな気持ちを毎回のライヴで真っすぐにぶつけてくる。観ていてとても気持ちがいいし、毎回衝撃を受ける。その衝撃は観るたびに増していき、観終わった後に深く心に刻み込まれて、頭の中にず~っと、余韻が残る(大袈裟ではなく!)。本当にライヴ・バンドなんだなあ、と思わされる。たいてい、きのこ帝国は最後に挨拶してライヴが終わるのだが、全員が楽器を放り投げてライヴを終えた時は特に印象に残っている。
メンバーそれぞれについて言えば、ギターの攻撃的な音と、ステージでの立ち振る舞いは見ものだ。何かしだすのではないだろうかというクレイジーな雰囲気が、ライヴでのひとつの楽しみでもある。ドラムは二代目になって、さらにベースとの間でリズムを安定させて、ギターの“危険さ”をいい意味で中和させている。それが、バンドとしてひとつの色になっているなと感じるのだ。
それから一番圧巻であるのは、ヴォーカルだろう。声は透き通っているのにも関わらず突き刺さってくるような鋭さ。それから歌詞の世界に耳を傾けてみると、余計に胸がしめつけられるような感覚に陥る。「ミュージシャン」という曲の歌詞にある≪狂った頭で色々考えて/不安を抱えて老いぼれていくんだろう/それでもやっぱり真っ直ぐ佇むあなたは/綺麗だろうきっと≫という部分などは、その鋭さが特に際立つ。
また、ライヴでのエモーショナルな世界とは正反対に、音源を聴いているとなぜだか感じるこの安心感…。その二面性もまたヴォーカルの表現世界がもたらす異質なところであり、エモーショナルなだけでは終わらない音作りへのこだわりをとっても、とても“音楽らしい”と感じる。楽曲面では、オルタナ系の歌もの中心であるように思えるが、ダブ、音響派、さまざまな音楽を取り入れつつもポップさが根底にあり、一部のマニアックな音楽好きならずとも、幅広い人がその魅力にやられてしまうのではないか。
ライヴ観るたびに、また足を運びたくなるバンドであり、長い間このバンドを観てきた私としても、これからどういう方向に進んでいくのか、楽しみだ!(チエリレコード)

初めての対バンはB'zのコピー・バンドと

――きのこ帝国の佐藤さんは大学時代に音楽サークルにも入っていたとききますが。

佐藤:そうですね。演劇とお笑いと音楽を一緒にやるという、変わったサークルで(笑)。わりと早い時期に行かなくなってしまったんだけど…。一緒に演奏したドラムの先輩が演奏の途中に、ドラム・セットから離れてPA卓の周りをピョンピョン飛び跳ねたりしてお客さん騒然としたり…、なんかそんな感じでした(笑)。

――深イイ話ですね。

金川:それ浅イイ話やろ。

佐藤:でも当時の先輩に“お前ら、一番ロックだったよ”と言われたりしましたけど…。

金川:あら~。

一同:う~む。

佐藤:あと一年生の初めのライヴで、インストでオリジナル曲つくろう!とか、「おしりかじり虫」のカヴァーやったりしました(笑)。

金川:佐藤さんはきのこ帝国がはじめてのバンド?

佐藤:そうです。中学3年生くらいから宅録をひとりでやっていて、バンドを組んだのはきのこ帝国がはじめて。路上ライヴもやったりとかもして。そのあと東京出てきました。

金川:はじめて出たライヴハウスは?

――あっ、“バンドマンあるある”深イイ話にもっていこうとしてない…?

金川:してない(笑)。

佐藤:池袋のマンホール。私たちの他はB'zのコピー・バンドがいて。“ウルトラ・ソウル!”みたいな感じで。初めてのブッキング・ライブみたいなものは高円寺のGEAR。

(寺尾伴内が佐藤さんの写真を執拗に撮り始める…)

佐藤:で、しばらくライヴを続けていたらART-SCHOOLの元マネージャーさんが観にきてくれたんですよね。それで、きのこ帝国のことを木下理樹さんに勧めてくれて。その繋がりでイベントにも誘ってくれました。

――数年後には、きのこ帝国も音楽雑誌の表紙を飾っているかもしれませんね。さて、本日はこのへんにして。みなさん飲みなおしましょうか(笑)。

また新たな酒場を求めて、われわれは夜の高円寺を徘徊するのであった…。乾杯!(完)

(2011年11月掲載)


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